言の葉 #003

「都ではお喋りができるから退屈しないよ。私は山は退屈で嫌ひさ」
「お前はお喋りが退屈でないのか」
「あたりまへさ。誰だつて喋つてゐれば退屈しないものだよ」
「俺は喋れば喋るほど退屈するのになあ」
「お前は喋らないから退屈なのさ」
「そんなことがあるものか。喋ると退屈するから喋らないのだ」
「でも喋つてごらんよ。きつと退屈を忘れるから」
「何を」
「何でも喋りたいことをさ」
「喋りたいことなんかあるものか」

男はいまいましがつてアクビをしました。

坂口安吾


言葉に対する説明

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